『コンビニバス』で地域の元気を考える研究報告
バス停にワクワクがやってくる!
平成30年4月27日(金)、公益財団法人トヨタ財団の助成を受けて調査研究した『コンビニバス』についての報告を兼ねたイベントを実施しましたので、ここにご報告いたします。
イベント趣旨
公益財団法人トヨタ財団2016国内助成プログラムに採択され、地方の移動手段と買い物行動の調査研究を行ってきた報告およびコンビニバスの提案をもとに、公共交通の専門家と、地域のブランディングの専門家をゲストに迎え、地方の交通手段や買い物行動について、自治体職員や地域の課題解決に取り組む方々が話し合える場を作ることを目的としました。
イベント情報
- 開催日時 平成30年4月27日(金) 13:30~16:30
- 会場 北海道立道民活動センター「かでる27」820研修室
- 参加人数 30名(報告者、話題提供者含む)
- 進め方 1.当法人からの事業報告 2.ゲストからの話題提供 3.グループディスカッション
当法人からの事業報告
公益財団法人トヨタ財団国内助成プログラム採択事業の報告
当法人では、公益財団法人トヨタ財団2016国内助成プログラム採択事業として、「コンビニバス運営-買い物弱者を支えるバス停コミュニティ創生の可能性」と題し、平成29年から4月から調査を実施してきました。
買い物弱者(特に高齢者)の多い地域におけるコンビニバスの運行を通じて、既存のバス停を買い物場所とした新たな地域コミュニティの再生・創生の実現の可能性について、先行事例調査およびモデル地域でのニーズなどから調査し、この度いくつかの知見を得ることができました。今回のイベントでは、調査のきっかけや得られた知見と今後の可能性について、当法人理事、杉田恵子より報告がありました。当報告では、まず、経営不振からの復活を目指した路線バスでの成功例や、全国の移動販売車での類似例の調査結果が報告され、成功例の共通点として、利用者・消費者のニーズをつかみ、地域貢献も担っていることが報告されました。
さらに、空知管内でご協力いただいたモデル地域で実施した住民アンケートの結果が報告されました。アンケートでは、日頃の買い物状況やバス利用について、および町内に新たに欲しいサービスについて伺ったところ、子育て世代・シニア世代ともに、物資の供給のみではなく、集い合える場の供給を望む声が多くあったことが報告されました。
また、コンビニバス事業の成立には、自治体、商工会、地域企業、バス会社等の協働が不可欠であることが結果として報告され、住民の声が反映される地域づくりが重要であることも見えてきました。。
報告終了後、参加者から出た質問をもとに質疑応答が実施され、質問では、調査内容に関する質問のほか、コンビニバスのコンテンツアイディアや、協働の仕組みに関するアイディア、実現のために懸念される事項などが出され、参加者同士のディスカッションの場にもなりました
ゲストからの話題提供
大井 元揮氏
(一社)北海道開発技術センター 調査研究部上席研究員
地域の足を守るために行なった路線や交通システムの改定や開発について、また、住民の意識や価値観を変えることも同時に必要である旨の話題提供をいただきました。
伊藤 敏郎氏
ベーシックインフォメーションセンター株式会社
地域ブランディングの実例をご紹介いただき、地域にはそれぞれそこにしかない魅力があることや、かつてあった大切なものを新しい形で掘り起こす、懐かしい未来を描くことが地域の暮らしのブランディングにつながる旨の話題提供をいただきました。
グループディスカッション
報告者・話題提供者含め5つのグループに分かれ、地方での暮らしに懐かしい未来を描くために、“買い物”と“交通”がどう組み合わされば良いのかや、コンビニバス実現への課題と展望、また実際のコンテンツアイディアなどが話し合われました。
グループディスカッション時の成果物
- ディスカッション後は、各グループから次のような内容が発表されました。
- 誰のためのコンビニバスなのかはっきりさせたほうがよい。乗ることを促すことよりも先に考えるのは大切。
- 町に収益を残す仕組みを考える必要がある。
- モノを運ぶバスに取り組んでいる地域が実際あり、そこでは商店会の活性化のために若者が立ち上がった。
- 高校生の修学旅行などを対象に農業体験バス。そこの農家で生産されたものを運ぶ。
- コンビニバスの実現が田舎に人が集まるきっかけになる可能性がある。
- 懐かしい未来を描くためにはブラッシュアップ必要
- 70歳以上の運転者が安心して免許証を返せる社会を実現させたい。
- コンテンツアイディアとしては、カラオケバス、人生相談バスなど。
- 財源をどうするのかが問題。豊富な資金のある企業に出してもらうなどは?
- 懐かしさという概念は何か?失われたものをどう復元するか。抽象的なので、議論が必要。
- ポストバスなど、人とモノを運んでいる事例は海外にもある。
所感
空っぽの路線バスにどんなモノやコトが乗ったら、その地域の暮らしが楽しくなるだろう。そんな発想から生まれたコンビニバス構想。約半年の調査で、実現にはたくさんの協働とエネルギーが必要だと感じました。
今回のイベントでは、お忙しい中ご参加いただいた大井さん、伊藤さんからたくさんのヒントとエネルギーのもとをいただいたとともに、実現に向けてまだまだ調査が必要であることも痛感しました。
ネットのワンクリックで物資が手に入る今日、物資の供給のみではなく別の付加価値のあるモノやコトを運ぶコンビニバスの想像図を描くうえで、イベントの中で伊藤さんが話された“懐かしい未来”という言葉は、心に残るキーワードとなりました。
今回のグループディスカッションで出していただいたアイディアが、懐かしい未来に描けるように、コンビニバスの実現へ邁進したいと思っています。
今回ゲストでお越しいただいたお二方を含め、交通関係の法律や条令についてアドバイスいただける専門家や、地域への社会貢献を検討している企業と、さらに地域のニーズ調査を進め、プロセス作りをしていくとともに、ご参加いただいた皆様や今後ご協力いただける方々と協働しながら実現に向かいます。